身代わり姫君の異世界恋綺譚
――花に触れた時、ほんのりと指先が温かくなった……。

「気のせいだよね」

真白は小さな紫色の花を摘んだ。

「これは枯れちゃってる……え?」

花を見た真白の目が大きくなる。

「今元気がなかったのに」

摘んだ紫色の花は茶色く枯れ始めていたが、真白がそれを摘むとみるみるうちにきれいな紫色の花びらになったのだ。

「目の錯覚? 見間違い? 私がお花を生き返らせることなんて出来るわけないよね。紫鬼なら出来ると思うけど……」

ためしにもう一度、つぼみの花を摘んでみる。

ポッ

真白の指先が一瞬温かくなりピンク色の花が咲いた。

そんな真白を垣根の向こうから見ている青年がいた。

忠臣と道重だ。

「道重、見たか? あの娘、やはり只者ではないな」

ニヤリ笑うと忠臣はすぐ近くの木戸から音も立てずに入り、花に気を取られている真白に近づいた。

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