身代わり姫君の異世界恋綺譚

さらわれた真白

ガサッと草を踏む音に、真白は我に返り音のした方を向く。

「だ、誰っ?」

2人の男がすぐ側まで来ていた。

身なりは良さそうだが、屋敷の敷地に入り込んでいる。

――阿倍家の知り合いの方?

そう考えたが、ニヤニヤした笑みを浮かべた男は善良な人には見えなかった。

一度襲われたことのある真白はとっさに後ずさり屋敷に向かおうとした。

だが男の方が素早く動き、真白は手首をギュッと掴まれる。

「いやっ! 離して!」

「静かにするのだ!」

掴まれた手首をグイッと自分の方に引き寄せ、片方の手で真白の口を塞ぐ。

「ん―――――っ!」

口を塞がれて真白は叫べなくなった。

「ほう……近くで見ると美しい娘だな」

忠臣は真白を見てにやりと笑った。

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