身代わり姫君の異世界恋綺譚
「いないではないか……どこにおるのじゃ?」

誰もいない部屋を見て、清雅は呟くと庭に出てみた。

「真白~?」

呼んでみても真白は姿を現さない。

そこへ桔梗がこちらへ向かってくるのが見えた。

盆には真白の好きな菓子が乗っている。

清雅を見て足を止め深くお辞儀をする。

「桔梗、真白はどこだ?」

「お部屋にいらっしゃるのではないのですか?」

「いや、いなかった。庭にでも出ているのか? それとも川に……」

――いやいや、嫌な体験をした真白は1人では川に行かないだろう。

「さきほどまでそこのお庭に出ておられたのに……」

梨を食べた後、真白は庭で花を摘んでいたのを桔梗は目にしていた。

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