身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紫鬼! 紫鬼! 戻ってくれ! 早く戻ってくれ!」

清雅は心細くなって叫んでいた。

――何があったのじゃ! 真白っ!

真白を見つけられるとしたら紫鬼しかいない。

「どうした? 清雅」

涙をこぼしていた清雅の背後から紫鬼の声がした。

「紫鬼っ! 紫鬼っ! 真白がいなくなったのだ!」

頬に濡れた涙を袖で拭きながら振り返った。

「真白がいない?」

紫鬼の片方の眉が上がる。

「私が山菜を採りから戻ると真白がいないのじゃ! どこを探してもおらぬのだ!」

紫鬼の顔色が変わった。

その場で目を閉じ集中し始めた。

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