身代わり姫君の異世界恋綺譚
その頃、忠臣に攫われた真白はまだ意識を取り戻していなかった。

「道重、この娘はまだ目が覚めぬ」

忠臣は布団の寝かせた真白を見ながら酒を飲んでいた。

「は……ぁ……」

「なんだ? 気のない返事だな。この娘がいなくなった所でなんの痕跡も残しれおらぬ。見つかるはずがないのじゃ」

クイッと杯をあおる忠臣は真白の頬を突っついてみる。

「この娘は、鬼の娘かもしれません」

「そうだな。人間ならばこんなに美しくはあるまい」

透き通るような真白の白い肌が気に入っていた。

髪の感触も忠臣をゾクッとさせる。

「このままこの娘を頂いてしまおうか」

「何をおっしゃるのですか! 忠臣親王ともあろうお方が」

お目付け役としての言葉が道重から出る。

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