身代わり姫君の異世界恋綺譚
「天候が荒れているのは紫鬼様のせいよ」

紅が外を見る清雅の隣に立ち、大きな木が左右に揺れるのを無表情に見た。

「そ、そうなのか?」

清雅が驚く。

「ええ、この前の雷だって紫鬼様が怖がる真白を面白がって起こしていたものだもの」

紅がバカらしいと口元で笑う。

真白が自分を頼るのが面白かったらしい。

――今の嵐といい……紫鬼様の心の中は穏やかではない。それほどまでにあの娘を愛してしまったと言うの?

部屋の中の紫鬼を振り返ってみた。

その時、紫鬼の姿がふっと消えた。

「紫鬼様?」

その声に清雅も振り返る。

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