身代わり姫君の異世界恋綺譚
部屋を出ると真白の目から涙が溢れだす。

――紫鬼と寝たことで清雅の信頼を裏切ってしまった気がする……。

手の甲でがしがしと頬に伝わる涙を拭く。

――紫鬼が好きだから身を任せた……だけど……。清雅の姉と恋人同士だった紫鬼。清雅はどう思っているのだろう……。

真白はうなだれて自分の部屋の障子を開けた。

――私が清蘭さんと似ているから……紫鬼は寝たの?

紫鬼の気持ちもわからなかった。

自分のことを気にかけてくれているのは分かるが、会ってまだ少ししか経っていない。

すぐに真白は紫鬼を好きになったが、紫鬼が自分のことを本気で好きだとは思えないのだ。

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