身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

「……都へ帰りたいと申すのか?」

清雅が箸の手を止めて真白を見る。

翌朝、朝餉の時に真白は切り出した。

「都に戻って、帰る穴を見つけたいの」

真白は考えすぎて一晩中眠れなかった。

清雅を申し訳なさそうに見る目は赤かった。

「帰る穴?」

――真白はまだあきらめていなかったのか?

2人の話を聞いている紫鬼と紅は黙ったままだ。

清雅の方に顔を向けていても、真白は紫鬼の視線をずっと感じていた。

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