身代わり姫君の異世界恋綺譚
――紫鬼、そんなに見ないで……。

真白は紫鬼の視線を感じて目を伏せた。

昨晩、紫鬼は真白の部屋に現れなかった。

考え事も真白を眠らせなくしていたが、紫鬼が部屋に来なくて不安になった。

真白の部屋の前の廊下に紫鬼が守るようにずっと座っていたのを真白は知らない。

そうとも知らずに真白は布団の中で寝返りばかり打っていた。

――紫鬼を待っていたわけじゃない、気持ちの整理がつかないのにまた紫鬼に抱かれたくなかったから……来たらどうしようと思っていた。



清雅はもくもくと箸を口に運んでいる紫鬼を見てから真白を見る。

「真白、あれほど穴を探したのになかったのだぞ? まだあきらめられないのか?」

――紫鬼はどうして何も言わないのだ? 2人は……その……。

どことなくおどおどした真白を見て、清雅は小さなため息を吐く。

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