身代わり姫君の異世界恋綺譚
「紫鬼と呼べ」

「えっ? でも、清雅がっ」

「紫鬼でいい」

紫鬼は静かに言った。

「わかりました」

素直に頷いた真白を見てから、紫鬼は後に回った。

「あ、あの梨をありがとう」

部屋を出てしまうのかと思い、真白は振り返り急いで言ったのだが、次の瞬間、ギョッとなり肩が跳ねる。

紫鬼の手が、真白のブラウスをスカートから出そうとしていたのだ。

「ちょ、ちょっと! 何をしているんですかぁ!?」

手を振り払おうとした途端に、身体が金縛りにあったように動けなくなった。

「なんで身体が動かないのっ! っ!いやっ! 紫鬼っ! 何をするのっ!」

ひんやりとした感触が肩甲骨の下に触れた。

背中を這う舌の感覚。

「くっ……」

真白の喉から絞り出すような声が洩れる。

金縛りにあっているのに、ひんやりとした舌が触れると、そこだけが熱を持っているみたいに熱くなる。

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