身代わり姫君の異世界恋綺譚
「……お前はなんと甘美な肌をしているんだ……」

紫鬼は驚いた。

――こんなにも舌を這わせただけで甘い肌の娘。

100年以上生きている紫鬼は、女と交わる事など日常茶飯事だが、機械的に欲望を処理するだけだ。

深く愛した女はいない。

清雅の姉の清蘭さえ、紫鬼を夢中にはさせなかった。

――だが、この娘は違う。

紫鬼は真白にただならぬモノを感じられずにはいられない。心が強く惹かれるのだ。

――おもしろい……。

真白の背中を滑るように、余すところなく紫鬼の舌が動く。

「っあ……や、やめて……」

真白の心臓は今にも破裂しそうなほどで、気もおかしくなりそうだった。

――こんなことされるなんて……。

まさか、背中の痛みを治そうとしてくれているとは思わず、真白はあらぬ方向に考えが行ってしまう。

「っ……あ……」

突然、襖が大きく開いた。

「紫鬼っ! 何をしておるのじゃ!」

清雅の驚く幼い声が、小刻みに震える真白の耳に聞こえてきた。

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