身代わり姫君の異世界恋綺譚
『そのような事をすれば真白は死ぬぞよ』
月明かりの下でも真白の瞳が真っ黒い瞳になったのが分かった。
「清蘭!お前!」
真白の腕が紫鬼の身体に巻きつく。
『会いたかったぞよ。紫鬼様』
黒い瞳から涙が流れた。
「真白をどこへやった?」
真白の身体を乱暴に扱うことも出来ず清蘭の腕は紫鬼の身体に回ったままだ。
『真白はここにおるぞよ? 今は眠っておるが。フフフ』
「真白の身体から出て行け!」
『それは出来ぬぞよ。紫鬼様に会いたい一心でわらわは物の怪になったのじゃ。そしてこの娘を呼び寄せた』
真白の指が紫鬼の唇に触れる。