身代わり姫君の異世界恋綺譚
「真白の身体から出て行け。お前には用はない」

冷たい言葉を吐くが清蘭は笑うだけだ。

『前のようにわらわを抱いてくださいませ』

紫鬼の胸に頬を寄せる。

――真白っ!

『もうわらわの力なくしてこの娘は生きられぬ』

早足の牛車の音が近づいてきた。

真白の身体にのり移った清蘭は紫鬼から離れ、優雅な所作で立ち上がる。

「父上様がいらっしゃった」

静蘭は満足げな笑みを浮かべた。

< 272 / 351 >

この作品をシェア

pagetop