身代わり姫君の異世界恋綺譚
「清蘭!」

父の口から清蘭の名前が出て、清雅は驚きながら紫鬼の後ろにいる女性を見た。

「あ、姉上!?」

『そうじゃ、会いたかったぞよ。父上様。清雅』

長い黒髪は姉の静蘭の姿。

清雅は状況が分からない。

――どうして姉上がここにいる? 死んだはずではなかったのですか?

清文が両手を組み合わせると呪文を唱え始めた。

月に雲がかかり辺りが暗闇になる。

唱え始めると真白の身体が苦痛に歪む。

『うぐぐぐぁぁ』

「清文! 止めろ。真白が死ぬ」

紫鬼が叫ぶと清文の呪術が止んだ。

『っ……は……』

焼けるような苦痛に清蘭は地面に膝を付いた。

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