身代わり姫君の異世界恋綺譚
「なんだ? 清雅。邪魔をするな」

まるで清雅が来るのが分かっていたかのように落ち着き払った紫鬼の声。

清雅の瞳に真白の白い背中が映り、急いで目を逸らす。

「いっ、い、いいったい、な、何を!」

「何をって……真白の身体を治している」

真白の背中を這う舌が止まるが、再び触れられると、ビクッと華奢な身体が跳ねる。

「放っておけば、勝手に治ります!」

清雅の言葉に、紫鬼は顔を上げた。

清雅を見る時はいつも柔らかい瞳なのだが、今は冷たさが伝わってくる。

「清雅、見たくないのなら出て行くんだな」

――行かないでっ!

「出て行け」と言う紫鬼だが、真白は清雅に出て行ってほしくない。

「紫鬼……」

清雅は下唇を噛み、紫鬼を見つめる。
今にも泣きそうな清雅だ。

紫鬼は大きなため息を吐くと「解」と口にした。

その言葉で、真白はフッと身体が自由になった。

あれほど動かそうにも動かせない金縛りから解放されたのだ。

ブラジャーまでめくれ上がったブラウスを急いで下ろす。

「あれ……? 痛みがない……」

無意識に動かした身体に、痛みが走らない。

動けないほど痛みがあったのに、今はまったく普通どおり。

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