身代わり姫君の異世界恋綺譚
「何を言っているのだ! お前を殺せるはずがないだろう!」

元気であれば肩を揺さぶって目を覚まさせてやりたい。

「つ……ら……いの……」

瞳がみるみる間に潤み目じりを伝い、布団を濡らす。

「真白……」

――私に何が出来るのか……。

「ゴホッ!」

渇いた咳が出た瞬間、真白は鮮血を吐いた。

「真白っ!」

血が逆流しないように真白の身体を抱き起こす。

辛そうに咳を繰り返す真白。

布団は見るに耐えかねる血が広がった。

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