身代わり姫君の異世界恋綺譚
紫鬼に言われた清雅は口元を引き締めると、黙って出て行った。

清雅が出て行くと、真白は紫鬼に足首をグイッと引っ張られた。

「きゃっ! な、何をするのっ!?」

どす黒くなった血がこびりついた膝は、ちょうど紫鬼の顔の前にある。

紫鬼が膝小僧に唇をつけようとした。

「い、嫌っ! 紫鬼! 汚いからばい菌がたっぷりと……あっ……」

傷口をペロリと舐められた真白は喘いだ。

「ばい菌とは何だ?」

顔を上げないまま紫鬼が聞く。

「ば……いきんって……雑菌……っあ……舐めたらお腹を壊すかも……んあっ……」

傷口を舐められているだけなのに、身体の芯から疼く感覚は何なのだろう。

――これ以上舐められたら、気がおかしくなっちゃう……。

背中同様、舌で触れる箇所は甘美な疼きを覚える。

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