身代わり姫君の異世界恋綺譚
「……」

「怨霊がはびこれば人間たちは生きてはいけない」

清蘭の力が増してきているのは十分承知していた。

真白の身体を自分のものにし、自由に動けるようになれば力を常に使える。

「お前ならば何をすれば良いか分かるであろう?」

聖天は悲しみの目で紫鬼を見た。

――私がしなければならないこと……。

「助からない命より、今を生きる命の方を重視しなさい。真白の命はお前が手を下さずともあと数日じゃ。真白が生きている間に殺さねば静蘭は他の人間を探すじゃろう」

それだけを言うと聖天は紫鬼の目の前からすーっと消えた。

紫鬼は拳をギュッと握り締めた。

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