身代わり姫君の異世界恋綺譚
紫鬼は清雅が出て行くのを待ち、この部屋を異空間にした。

清蘭に話を聞かれては失敗する恐れがあるからだ。

部屋の空気がキーンとした静けさに変わったのがわかった清文も床に胡坐をかいて紫鬼が口を開くのを待っていた。

「なぜこのようなことをするのかと思っておるであろう? 清文殿」

紫鬼は悲しげな表情を隠すことが出来なかった。

自分の一部がすでに死んでしまったかのようだ。

「誰にも聞かれたくないのじゃな?」

清文に紫鬼はゆっくり頷く。

「……清蘭の力はますます増してきている。最初は真白の身体から清蘭を出せると思っていたが、隙を見せない清蘭はどんどん真白の身体を自分のものになってきている。真白が清蘭の中で死ぬのも時間の問題だ」

「……うむ」

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