身代わり姫君の異世界恋綺譚
「ほう……気持ちいいのか。いやらしい顔をしているぞ」

「もう……いい……やめてよ……紫鬼……」

泣きそうになりながら懇願すると紫鬼の動きが止まった。

――悪戯が過ぎたか……。

真白は目尻に涙を溜めていた。

紫鬼は真白の身体を抱きあがると、まだ敷かれたままの布団の上に降ろす。

「少し休め。体調が狂い始めている」

布団の上に下ろされた真白は先ほどの疼くような感覚から解放された反動なのか、身体に鉛でも乗せられたみたいな怠さを感じていた。

「寝るんだ」

戸惑う瞳が長い睫毛に隠れ、真白は催眠術にかかったように目を閉じた。

紫鬼は畳の上に転がった梨を手にすると、眠った真白の枕元に置き部屋を出た。

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