身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白の額から大粒の汗が噴出している。

布で汗を丁寧に拭う。

「辛いだろう……真白」

真白の痛々しい姿に呟くと、真白の目がうっすら開いた。

「……し……き」

腕を動かし、紫鬼に触れようとするが力なく布団の上に落ちる。

――紫鬼……そんなに悲しい顔をしないで。

紫鬼は真白の手を大きな手で包み込む。

「キ……スし……て……」

真白の世界で言う口付けの意味。

紫鬼は真白を抱き上げると、唇を静かに重ねた。

< 313 / 351 >

この作品をシェア

pagetop