身代わり姫君の異世界恋綺譚
振り返った紫鬼の目から涙が頬を伝わっていた。

「う……うむ……」

清文は清雅を畳みの上に寝かすと、差し出された光る剣を受け取った。

「本当に良いのか? 紫鬼」

清文のこめかみからツーッと汗が流れる。

「お願いします。清文殿」

凛とした声は変わらない。

――この世に生きていれば再び静蘭が復活するかもしれない。

一緒に滅せられなければならない。

もともと100年前、死にたかった紫鬼。

真白と一緒に死ねれば本望だ。

「清雅が……寂しがる」

ちらりと畳みの上で気を失っている清雅を見やる。

紫鬼がいなくなったと知れば清雅はどんなに悲しむであろう。

それを思うと清文は泣けてきた。

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