身代わり姫君の異世界恋綺譚
――私は本当にどうしちゃったんだろう……。もう二度と戻れないの? パパ、ママ……心配しているよね……。

今までの出来事を思い出すと、だんだんと家に帰りたい想いが強くなってくる。

――嫌だ! パパとママに会えないなんてっ!

「パパっ! ママっ!」

真白は立ち上がると、障子を開けて廊下に出た。

靴は見当たらなかったが、そんなのは関係なく無我夢中で真白は庭へ降りた。

――あの穴へ行けば、元の世界へ戻れる。

真白はそう思い、暗闇の中を駆け出した。

◇◆◇

『実長、あの娘が動き出した。今日こそ捕まえるのじゃ』

歌うような女の命令に、実長は声に導かれるまま庭へ出た。

◇◆◇

「また物の怪の気配!」

真白の部屋へ向か廊下を歩いていた清雅は物の怪の気配を感じた。

立ち止まり目を閉じると、心を研ぎ澄まして物の怪の気配を探ろうとした。

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