身代わり姫君の異世界恋綺譚

「紫鬼っ！」

真白は失くした記憶を今、すべて思い出した。

「どうしてっ！？　どうして私はここに戻って来られたのっ！？」

涙がとめどなく溢れ出て真白は顔を手で覆った。

最後、清蘭にすべてを乗っ取られた。

その後が思い出せない。

そしてそれよりも紫鬼にもう会えない気持ちが真白の胸を締めつける。

もう二度と会えない想いに真白は泣き叫んだ。

「紫鬼っ！　紫鬼っ！　会いたいよう」

出来ることならば向こうの世界へ戻りたい。

「真白？　話があるのだけど？」

ドアの向こうから母親の声が聞こえたが真白は涙を止めることが出来ずに泣いていた。

「真白？」

返事がない母は心配し、ドアを開けた。