身代わり姫君の異世界恋綺譚
目に飛び込んだのは布団に臥せって身体を振るわせ泣いている娘だった。

母親は驚きベッドに駆け寄った。

「どうしたの? 真白っ!?」

肩を揺さぶるが母親を見ようともしない。

「真白っ」

「……いやっ! 死にたい……」

あの時、苦しさで死を望んだ。

――紫鬼に会えないのなら生きていたくない。

「何を言っているの!?」

真白の言葉に母親は驚いた。

「思い出したの? 思い出したのね?」

真白の身体を起こし揺さぶる。

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