身代わり姫君の異世界恋綺譚
清雅は真白が隋人に連れて行かれたと聞いて慌ててきたのだ。

「父上、この娘は……」

「お前が話していた娘だろう? 本当に清蘭に瓜二つだ」

清文は嬉しそうに顔を綻ばせ、清雅を見てから真白に視線を移す。

ここの主に住むことを認められて真白は安堵した。

元の世界とつながっている穴の近くにいられるのは都合がいいし、ここを放り出されでもしたら行く所などないのだ。

「娘、名を何と申す?」

「上条真白です」

「真白、まずはその姿はここではまずい。女房に着物を用意してもらうが良い」

――にょ、女房?って……奥様?

「着物って……」

――嫌な予感がする。

「もちろん十二単(じゅうにひとえ)だ。今日からお前は私の客人。必要な物は何でも申しなさい」

――嫌な予感的中……無理だよ。あんなの着れない。着たら動けなくなる。

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