身代わり姫君の異世界恋綺譚
「まあ化け物と言えるな。だから夜は大人しくこの部屋で過ごすが良い。昨晩のように外に出てはいけないぞ」

10歳とはまるで思えない言葉遣いだ。

「ねえ、清雅。この部屋にいれば大丈夫なの?」

「私が結界を張っておく」

「結界……」

――結界ってアニメでしか見たことないんですけど……。

「物の怪にとりつかれたら死ぬからな。わかったか?」

――そんな事、聞いたら怖くて外に出られないよ。トイレにだって行けない……。

ここのトイレはこの部屋から少し離れた外にあるのだ。

現代の水洗トイレに慣れた真白だが、この世界での多少の不便は仕方ない。

――だけど、不便すぎるっ。早く穴を見つけて帰らなきゃ。

先ほど出て行った桔梗がお膳を持って戻ってきた。

今日はおかずの乗った皿がある。

それを見た途端、真白のお腹が「ぐうー」と鳴った。

「昨日の夕餉を食べ損ねたからな。お腹が空いたのじゃろう。桔梗が特別に作ってくれたのだぞ」

清雅はすでに箸を手にしていた真白に呆れたように言った。

「桔梗さんっ!ありがとうございます。いただきます!」

桔梗にお礼を言うと、真白は食べ始めた。

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