身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白は掌の傷を治されながら、心が落ち着いていくのを感じた。

――紫鬼は私を隔たりある目で見ない……。

俯き加減の紫鬼の顔をぼんやりと見つめていた。

その時、ふいに紫鬼が顔を上げた。

ぼんやり紫鬼を見ていた真白は目と目があってしまい慌てて目をそらした。

「なぜ目をそらす?」

――恥ずかしいからに決まってるよ……。

「あ、ありがとう」

話をそらそうと、きれいに傷がなくなった掌を見て、真白は急いで言った。

「お前は傷を作ってばかりいるな。だが、いくら作っても私が治してやる」

「紫鬼……」

麗しい顔と言うのがぴったりな紫鬼。

ずっと見ていたいと思わせる。

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