身代わり姫君の異世界恋綺譚
「いや……お前は昨日、病気の者に近づかなかっただろう? だが、穢れを受けた」

「う、うん……」

真白は心配そうな顔になった。

「外へ出る時は私が付き添うことにしよう。あまりこの部屋から出てはいけない。多少の穢れならば清雅が祓えるが」

紫鬼は真白の顔をじっくりと見た。

――納得いかない顔をしているな。この部屋にじっとしている娘ではないか。

「紫鬼、穢れを祓ってくれてありがとう」

真白はまだお礼を言っていなかったことを思い出し慌てて言った。

「紫鬼様」

障子の向こうで女性の声がした。

「紅(べに)、何用だ?」

紫鬼は真白と話しながら、紅の気配を感じていた。出た言葉はそっけない。

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