身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

紫鬼と清雅がいなくなってしまうと真白は穴を探しに出たくなった。

――だけど私は穢れを受ける体質だからって言っていたし……。

何もすることがないから退屈なのだ。

御簾を下げられてはいるが、廊下を行き来する人は見える。

――本当に平安絵巻を見ているみたい……。

艶やかな着物を引きずりながら歩く女の人。

男性は姿勢正しく真白が唯一知っている「光源氏」のようないでたちで通っていく。

――私、どうしちゃったんだろ……どうしてこんな世界に来ちゃったんだろう。パパ、ママ……すごく心配しているよね。

両親を思い出すと涙が出てきた。

「お願い! 誰か! 私を元の世界へ帰して!」

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