身代わり姫君の異世界恋綺譚
「本当に、どうして来てしまったのかしらね?」
「だ、誰っ!?」
楽しげな女性の声に、真白は驚いてキョロキョロと辺りを見渡した。
御簾の外にいた声の主は、御簾をあげて部屋の中へ入って来た。
見覚えのある紅色の鮮やかな着物。
だが、それは姫の装いではなく紫鬼と同じような着物で身軽に動けそうだ。
――今朝、紫鬼を呼んだあの人だ。
「私は紅(べに)」
真白の目の前に来ると名前を名乗った。
「紅さん、どうしてここに?」
今まで泣いていた涙は、紅が来たおかげで止まっていた。