身代わり姫君の異世界恋綺譚
『また鬼の娘が出歩いているわ』

『おお、いやだ。私たちに不吉なことが起こらないと良いのだけど』

真白の耳に再び聞きたくない言葉が飛び込んできた。

思わず耳を塞ぎたくなる。

――気にしちゃダメ……。

真白は庭に出ると、塀に向かった。



いつの間にか正門の近くまで来てしまっていた。

屋敷から清雅と清文、お付の者たちと山吹色の着物の女性が出てきたのを目にした。

――清雅だ。

10歳と小さいのに、威厳が感じられるのは由緒正しき血筋のせいなのか。

背筋がぴんと張り、堂々とした足取りは10歳の少年らしからぬいでたちだ。

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