身代わり姫君の異世界恋綺譚
◇◆◇

「紫鬼っ! まだ見つからぬのか!?」

胡坐をかいて目を閉じていた紫鬼に、清雅が焦ったように言う。

次の瞬間、紫鬼は目を開け清雅でもゾクッとするような表情になった。

そして清雅の見ている前でスッと消えた。

――紫鬼は真白を見つけたのだな。

清雅は少し、安堵した。




紫鬼は地面にうずくまっている真白の足元に立った。

――真白。

こめかみから血を流している真白を見て怒りがこみ上げた。

「誰だ! こんなことをしたのは!」

辺りには誰もいなかった。

しかし、憤りを感じ紫鬼は叫んでいた。

紫鬼は真白を抱き上げると、その場から消えた。

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