身代わり姫君の異世界恋綺譚
真白を抱いた紫鬼が現れると、清雅は駆け寄った。

「紫鬼、真白はどこにいたのじゃ?」

濡れていた畳は拭かれ、まだ湿っている箇所は美しい布が敷かれていた。

「清雅、布団を出せ」

「あ、ああ」

清雅は急いで布団を敷くと、紫鬼は静かに真白を寝かせた。

寝かされた真白を清雅は見る。

「な! なんで真白のこめかみから血が出ているのじゃ!」

傷口は深くはないが、もう少しずれていれば血管の上で、かなりの出血だったはず。

「穢れは昨日よりも更に受けている。すぐに取り払わなければ。清雅、出て行け。しばらく誰もこの部屋に寄せ付けるな」

紫鬼がむっすりとした表情で言うと、清雅は不安ながらも紫鬼の言うとおりに部屋を出た。

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