身代わり姫君の異世界恋綺譚
金縛り状態で、結局はしばらく唇を塞がれていた真白。
呪縛から解かれた真白は、布団の上に座ってうつむいて泣いていた。
紫鬼のおかげで穢れは祓われ、身体は元気になった。
だが、真白は泣いていた。
「……そんなに嫌だったのか?」
泣いている真白を見て困り果てている紫鬼は聞いてみる。
「うっく……」
何が悲しくて泣いているのか、真白は自分でも分からなかった。
今日はいろいろな事がありすぎた。
この世界で受け入れられない自分はいったいなんなんだろう。
元の世界へ帰りたいだけなのに……帰ることが出来ない。
――紫鬼のキスは嫌じゃない……。だけど……。
彼がいた事がない真白にはファースト・キスだ。
前にも紫鬼に口付けされたことを知らない真白は、目が覚めるとキスをされていたことにショックを受けていた。