身代わり姫君の異世界恋綺譚
「食事を終えたら治そう」

紫鬼はお膳の用意をしている桔梗から真白に視線を戻し言った。

「い、いいよ! もう十分紫鬼に治して貰ったから。これくらいなら放っておいても治るよ」

頭が混乱している。

――早くひとりになりたい。

「何を言っておるのだ!? そのままでは傷が残る。ごちゃごちゃ言わずにその紫鬼の恩恵にあずかれ」

「お膳が整いましたわ。どうぞお召し上がり下さい」

真白に桔梗は言うと出て行った。

清雅に促され、真白はお膳の前に座るとお箸を手にした。

2人に見ていられるのも嫌だが、それにもまして昼間のことが脳裏に甦り、食欲が出ない。

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