ルイ~涙~
先生は、まだここに来てあんまり経ってないのに、もう病室から出ていこうと、ドアの方に向かって歩き始めた。
それにまだ、あたしの質問に答えてもらってない。
どうして“圭伍くん”は、顔っていう珍しいところを骨折しちゃったのか。
聞かなきゃ…怖いよ。
ちゃんと話せなくなっちゃう。
「じゃ、僕はこれで」
「えっ…!待ってよ!あたしの質問に――」
でも先生は、そんなあたしの心を見透かしているように、あたしに背を向けたまま、意味深な発言をした。
「…それは、今本人に直接聞いて。僕が話すようなことじゃないと思うから」
本人に、直接…
えっ、ちょっと待って。直接って…?
「え…?本人って……」
ドクンッ、ドクンッ――。
心拍数が、一気に上がっているのが分かった。
まさか……。
「……ケーゴ。入っていいぞ」