ルイ~涙~
内山先生が、そう言うと。
――ガラッ――
「……っ」
ガラッと…ドアが、開いてしまった。
内山先生が手をかけたんじゃなくて。
外側から…ほぼ確信に近い、誰かによって、開けられた。
そして、その“誰か”があたしに正体を見せる前に、内山先生は病室から出て行ってしまった。
「ケーゴ。しっかりな」
「…わかってるよ。うるせえな」
「じゃあ、僕は診察に戻る」
「…ん。いってら」
「おう」
先生の姿が見えなくなったとき、外からはボソボソっと、そんな会話が聞こえた。
おそらく……ううん、絶対。
今内山先生と外で話してた人物。
今、外で立っている人物は――。
あの、“圭伍くん”だ。
「……」
「……」
――話し声が聞こえなくなってから、もう3分ぐらい経ったのに。
彼は、まだ中に入ってきてくれない。
どうしよう…。
やっぱり、あたしに会うの…嫌だったのかな。
だって、こんな体だもん…。
ベッドの隣には、点滴。
心拍数とかが表示されている、大きな機械。
病室から出歩くときは、必ず点滴をつけたまま歩かなきゃいけない。
だから今日、病院のどこかであたしを見て…話すのが嫌になったのかもしれない。
あたしは、まだ顔を見せてくれない、ドアに隠れている“圭伍くん”に、勇気を出して話しかけてみることにした。
「あの……圭伍、くん……?」
「……」
返事もしてくれない。
でも、そこにいることは確か。
だって、影だけは病室の中に入っちゃってるし。
ほんとに……嫌われた?
まだ会ってもないのに?
「あの……、ごめんね。あたしに会うの、嫌だよね。こんなボロボロの体なんだし…。」
あたしがそう言った、次の瞬間。
さっき、内山先生と外で話していたあの声が――聞こえたんだ。