ルイ~涙~
「ではこれを、レントゲン室にいる先生に渡してください」
「はい」
さっき、内山先生から受け取っていた診察用紙を俺に渡し、向かっていた場所と反対方向を向き、すれ違った。
これは、気になる。
何があったんだろう。
あんなに人の顔が青ざめたのを見たことなんて、1度もなかった。
さっきの看護師の顔が、頭から離れない。
でも俺は今から、レントゲン室に行かなきゃならない。
「……あーあ」
もうこれはしょうがない、と、さっき看護師に教えられたレントゲン室へ、一人で向かった。
2歩ほど歩き始めた、その時だった。
背後から、さっきの看護師の声が聞こえたのだ。
振り返ると、もう角を曲がったあとなのか。姿は確認できない。
でも。
姿が見えなくても十分に聞こえるぐらいの、大きな声だった。
その内容も。
絶対、私用の電話ではないことも察することが可能だった。
「えっ!?……お母さん、落ち着いてください!ルイちゃんはきっと大丈夫です!今、内山先生に連絡します!」
思わず、足が止まった。
あの電話は……救急用の電話だ。
きっと。
あのさっきの看護師の顔は……何かに感づいていたんだ。
何だろう。
……すごく、気になる。
……でも俺にはレントゲンが……。
「……」
どうしよう。
どうすればいいんだ。
レントゲン室に行かなきゃ。
でも気になる。