ルイ~涙~






「ではこれを、レントゲン室にいる先生に渡してください」


「はい」






さっき、内山先生から受け取っていた診察用紙を俺に渡し、向かっていた場所と反対方向を向き、すれ違った。





これは、気になる。


何があったんだろう。





あんなに人の顔が青ざめたのを見たことなんて、1度もなかった。






さっきの看護師の顔が、頭から離れない。








でも俺は今から、レントゲン室に行かなきゃならない。




「……あーあ」






もうこれはしょうがない、と、さっき看護師に教えられたレントゲン室へ、一人で向かった。






2歩ほど歩き始めた、その時だった。







背後から、さっきの看護師の声が聞こえたのだ。



振り返ると、もう角を曲がったあとなのか。姿は確認できない。






でも。

姿が見えなくても十分に聞こえるぐらいの、大きな声だった。




その内容も。




絶対、私用の電話ではないことも察することが可能だった。










「えっ!?……お母さん、落ち着いてください!ルイちゃんはきっと大丈夫です!今、内山先生に連絡します!」









思わず、足が止まった。




あの電話は……救急用の電話だ。

きっと。




あのさっきの看護師の顔は……何かに感づいていたんだ。








何だろう。


……すごく、気になる。






……でも俺にはレントゲンが……。








「……」








どうしよう。

どうすればいいんだ。



レントゲン室に行かなきゃ。



でも気になる。







< 80 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop