他人の彼氏
そして・・・・


畳まれた布団の上に座り
テレビを見ている黒崎伸治の姿がある。


「ほら、鍵」


目が合うなり、そう言うと
鍵が飛んできた。


「ありがとう・・・」


「あぁ」


・・・・・・言葉が出てこない。



何で、こんなに緊張するんだろう。


鍵を手に、立ったまま
何も言えず
座ることさえできない私がいる。



「何突っ立ってんだ?」


そんな私を見て
不思議そうに笑っている。


「あ・・・あっ、そ、そうだ。
あの、この鍵・・・」


バッグの中から
黒崎伸治の部屋の鍵を取り出し
差し出した。


「何だこれ」


「前、楓さんに借りてた鍵・・・
私には、もう必要ないから」


今、黒崎伸治と住んでいるのは
私じゃなく、彼女であり・・


もう、私が
この鍵を使って
部屋の中に入る事はない・・・。






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