他人の彼氏

「・・・えらないで。
帰らないで。
嫌だ、もう・・・
待つの・・嫌」



もう、自分の気持ちを
抑え込めない。


「希・・・?」


「一緒にいたい」


そう言いながら
黒崎伸治にしがみつくように
胸元に顔を埋めた。



「・・・分かった。
じゃー、二人で
頑張るか」


優しく頭を撫でながら
抱きしめてくれる。



「よしっ、行くぞ」


そう言うと
私を立ち上がらせ
力強く手を握り
引っ張るように
玄関へと向かった。


そして・・・・



ガチャッ。



鍵を開け、

扉を開けると


座り込み、泣いている
彼女が
私達の方を見上げ


「しん・・・ちゃん?
ねぇ、帰ろ・・?」


涙に濡れた顔で
必死に笑顔を作り
黒崎伸治に
手を差し伸べている。
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