他人の彼氏
「・・・そうだな。
これで良かったのかもしれないな」



寂しそうに、そう呟くと


「何言ってんのよ!?
ねぇ、親孝行だと思って・・
お願い。
私達を助けて?」



そう言いながら
黒崎伸治に擦り寄る継母の姿を見ながら


「お母さんっ、もう・・・
もう・・やめようよ。」


泣きそうな顔をして
継母の腕を引っ張っている
やよいさん。

そして、
強張った表情で
黒崎伸治を見つめ



「しんちゃん、ごめんなさいっ。
楓ちゃんが言ってた通りなの」


「やよいっ!
変な事言わないの!」


「お母さんは黙ってて!
しんちゃんの事、ずっとずっと好きで
でも、しんちゃんの隣には
常に彼女とかがいて・・・
私、ほら・・こんなだから・・・
何にもできなくて・・・
お母さんを利用したの。
お金持ちなら・・って・・・
お父さんの帰る時間帯とか調べて
偶然装って・・・
全部全部、私がお母さんに頼んで
私が・・・考えた事なの。
ごめんなさいっ・・・っ」



涙を浮かべ
大きく頭を下げながら
小さな肩は震え

そんな、やよいさんの姿を見ながら

継母も黙り込み
うつむいてしまった。
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