他人の彼氏

「あ、あのっ、じゃ
私 職安行ってきます。」


そう言いながら
勢い良く立ち上がったのはいいけれど

足元にあったクッションに足をとられ
コケそうになる私を

目の前にいた 黒崎伸治が


「あっぶねぇなぁ。
大丈夫か?」


とっさに支えてくれたおかげで
助かったのだけれど・・・・


私の顔は、黒崎伸治の顔の すぐ下にあり
両手で支えられていて
その距離、わずか15cm・・・・


ただでさえ、
惚れそうだという危機感の上に
この男を、この距離で直視してしまうと
心臓は ありえない速度で
加速していくのは仕方がない事であり・・


只今・・・・

藤崎希、思考回路停止中の為
その場から動けないわけなのですが

この体制は、心臓に悪すぎて
もう、耐えられないので・・・・


「えぇ・・・っと。
では!いってきますっ」


「は!?お、おい!?」


いや、もう
お礼言いたくても、
ちゃんと顔見たくても、

いっぱい、いっぱいすぎて

無理なのです。


ごめんなさい、黒崎伸治・・・・


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