その男、小悪魔につき。【停滞中】
……同じ、気持ち。
何だか嬉しくて頬を赤らめると、千尋くんが頬杖をつきながら私を見た。
「可愛い」
「ちょっ、やめてよ!」
「うわ、いって」
ポカポカと笑っている千尋くんを叩いていると、後ろから声が聞こえてきた。
「櫻井くん……?」
すると千尋くんの視線が私から外れて、瞳が大きく開かれる。
「佳苗さん……」
かなえさん……?
振り返るとそこには恐らく私より年上ほどの女性が、立っていた。
何となく頭を下げると、その女の人は私を見て泣き笑いのような表情になる。
えっ……
「あの、」