その男、小悪魔につき。【停滞中】
昼ごはんを食べ終わり、外回りの真緒とはそこで別れ、私はエレベーターに乗った。
はぁ…。
何でこんなことになったんだろうか…。
どんどんと上がっていく階数表示を見ながら、私は溜め息を吐いたーーー
千尋くんの真剣な眼差しに、私は頷く。
「うん、話してほしいの。あの晩のこと…。」
「わかりました。あ、一つ断っておきますけど話したら後には引かないですよ、俺。」
「う、うん。それは…大丈夫。」
緊張した私に、千尋くんはクスッと笑ってソファーに座る私との距離をつめた。
そして次の瞬間ーーー
夕陽に照らされた私たちの影が重なっていた。
私が思わず目を見開くと、きちんと目を閉じていた千尋くんは離れると同時に、長い睫毛をしばたせながら目を開いた。
「あの夜から3ヶ月間、俺たちは恋人同士になったんですよ。」
「えっ…は…え?」
「ふふっ、驚いてますけどこれ、彩月さんからのお願いですからね?何でも織田さんがどうのこうのって、あの晩もずっと言ってました。」
え、嘘…。
織田さんとの事も全部話したのか、私…。
「てっ、てか!今キス……!」
先ほどの事が思い出されて、急に顔に熱が集まる。
「だって…恋人ですしね?恋人の家に来てすることと言ったらキスか…」
「あー!ちょっストップ!わかったから!」