その男、小悪魔につき。【停滞中】






「ではそちらの配布資料は金曜日までに作成しますので、はい……そうですねぇ、うーん。出来れば火曜日にもう一度、はい、お願いします。では」


名古屋出張を終えても私の目まぐるしい程の忙しさは絶えず続いた。


でもおかげで色々考えずに済む。


どうやら千尋くんもマメではないらしく、あまり必要に連絡をしてはこなかった。


でも私が酔っ払った金曜の夜だけは必ず「彩月さん?今日は呑みすぎないでね。」と冷やかしのような電話をしてくれる。


趣味、休日の過ごし方、やっているアルバイトの話……


最初はすごく警戒心丸出しだったんだ私。


でも千尋くんは話を聞くのも話すのも上手で。




いやしかし、何仲良くなってんだ。


「はぁ。」


駅のホームをため息混じりに歩いていると、自動販売機の前でしゃがみこむ女の子が見えた。


あー、この時間だし飲み会で羽目外しちゃったのかな?



“大丈夫?”
そう声をかけようとした時、一人の男の人が水を女の子に差し出し、背中をさする。


あ、なんだ。彼氏と一緒なら心配ないか。


と、そのまま通り過ぎようとしたが……私は立ち止まってしまった。



え……あれって……

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