その男、小悪魔につき。【停滞中】
「何よ。どうかした?」
軽く悲鳴をあげると、隣から真緒が腕を小突いてきた。
「あの人……」
私の指差す方に視線を向ける真緒。
「何。知り合いだったの?」
「はい?真緒も1回会ったでしょ?」
「え!!アレが噂の……!?」
真緒の声が大きくなり、周辺の人たちが一斉にこちらを見る。
「ちょっ!真緒、声が……あはは、すみません。何でもないですー。」
手でクイクイと前を向くように促し、横目で真緒を睨む。
「ごめんごめん。イケメンだってのは覚えてたけど私もあの日酔ってたからさ。」
「どうしよう……やっぱり皆には黙っておいた方が……」
「バーカ。そんなことしてたら……」
真緒が顎で千尋くんが立っている方を指す。
すると周辺の人はおろか、ほとんどの女子社員がハートの目を向けていた。
「だから怖いんじゃない!絶対みんなから……」
「じゃあ教育係になってもらう、蓮見と寺井はちょっと会議室に来い。あとは仕事戻れー。以上解散。」