その男、小悪魔につき。【停滞中】
しかしそう言った自分をすぐに呪った。
ひいぃっ!!!
千尋くんの綺麗な顔は笑っているのに、瞳は酷く冷たい。
「なっ、何よ」
でも嘘をついた手前、引き下がれずにそう言うと素早く手を掴まれて、エレベーターに乗せられた。
「ちょっと、どうし……」
「どうしたじゃないですよ。全く。」
ジロッと横目で睨まれ、思わず私は口をつぐんだ。
重苦しい空気の中、一階にようやく着きまた千尋くんに手を引かれながら歩く。
やばいっ……みんなに見られちゃう!
「千尋くん、手離してっ」
そう言うと早歩きをしていた足をピタッと止めて、私を振り返った。
「……あなたはこの期に及んでそんな事を言うんですか?」
ぐいっと顔を近づけながら言われて、身を縮める。
うっ……。
するとまた歩きはじめ、真緒に千尋くんが話し掛けた。
「すみません。蓮見先輩、具合が悪いようなので今夜の合コンは行けないそうです。」
合コン、の所は私を横目で見ながら、真緒にそう断った。
うぅ、もう悪かったよ……。
「……ふふっ、だと思ってましたからもう一人声かけてあるわ。じゃ、櫻井くん彩月をよろしくね。」
ペコリと頭を下げて、千尋くんは私の手を引いた。