その男、小悪魔につき。【停滞中】
彩月先輩からは他の女と違って、計算しているようなものは見受けられない。
だから心配になるし、目が離せないのだ。
男を100パーセント信用してはいけないんだと。
出会った日に聞いた男の話を聞いて余計にそう感じてしまう。
あの無垢な笑顔でずっといてほしい。
そこまで考えて俺は自分に対して笑えてきた。
何も彼女に話していない、いや話す気のない自分が何を言っているのだ。
しかし今この瞬間、彼女の手を引いて歩くと安心できる。
横を見ると素直に俺に手を繋がれて歩く彩月先輩。
「……良いのか?」
これでどんどん俺の記憶から彼女を消していって、別の誰かで埋めていって。
俺の中でさえ彼女が過去になって、良いのだろうかーーー
千尋sideおわり