その男、小悪魔につき。【停滞中】
「ありがとう……でも、うちでも良かったのに。」
可愛くないことを言っている自覚はあるが、何となく意地を張りたくなった。
すると千尋くんはストンと同じ高さに腰を降ろし、私の顔を両手で挟む。
「病人の看病なら自分の家の方がしやすかったんで。それに俺、彩月先輩の家知らない。タクシーではいびきかいて寝るし」
「えっ!!いびき!?」
私の問いには答えずに、千尋くんは微笑むとコツンと額を合わせてきた。
「やっぱ熱ありますね。最近忙しくしすぎでしたし、少し休養が必要ですよ」
「うん。そうだね……」
顔が近くて若干俯きがちになると、千尋くんにあごを掴まれる。
「しかも危うく男女の戯れる出会いの場に……」
「ちょっ!そんないやらしい言い方しないでよっ」