その男、小悪魔につき。【停滞中】



「ありがとう……でも、うちでも良かったのに。」


可愛くないことを言っている自覚はあるが、何となく意地を張りたくなった。


すると千尋くんはストンと同じ高さに腰を降ろし、私の顔を両手で挟む。


「病人の看病なら自分の家の方がしやすかったんで。それに俺、彩月先輩の家知らない。タクシーではいびきかいて寝るし」


「えっ!!いびき!?」


私の問いには答えずに、千尋くんは微笑むとコツンと額を合わせてきた。


「やっぱ熱ありますね。最近忙しくしすぎでしたし、少し休養が必要ですよ」


「うん。そうだね……」


顔が近くて若干俯きがちになると、千尋くんにあごを掴まれる。



「しかも危うく男女の戯れる出会いの場に……」


「ちょっ!そんないやらしい言い方しないでよっ」


< 64 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop